ITパスポートは履歴書に書ける?書き方の例や転職時にITパスポートを活かすためのポイントを紹介
ITパスポートは、ITの基本的な知識を問われる国家試験です。難易度がそれほど高くないこともあり、どのように履歴書へ記入すればよいか迷ってしま…
「情報処理技術者試験」の中でも入門的な試験である「ITパスポート」。ITの基本的な知識の習得を証明する国家試験です。今回はITパスポートの難易度について詳しく解説。試験の概要、合格率、求められる知識などをご紹介します。これからITパスポートを受験する方・ITパスポートに興味がある方・ITスキルを身につけたい方などはぜひご覧ください。
目次
ITパスポートは、情報処理技術者試験の一つで、経済産業省認定の国家試験です。この試験に合格することで、 ITに関する基本的な知識の習得が証明できます。
国家試験としては初となる、コンピュータでの試験(CBT方式)である点も大きな特徴です。
試験は「ストラテジ系、マネジメント系、テクノロジ系」の3分野から出題され、 ITマネジメント・システム戦略・プログラミング・セキュリティなど、合格にはITの幅広い知識が求められます。
ただし、IT系試験の中では入門レベルに位置付けられており、勉強すれば誰もが合格を目指せます。そのため、IT業界に興味がある方・ITスキルをこれから身につけたい方などに向いた資格と言えるでしょう。
ITの浸透・DX化の進展などを背景に、受験者数も増加傾向にあります。
ITパスポート試験の概要は、以下の通りです。
■ITパスポート試験の概要
ITパスポート試験実施日 | 全都道府県で随時実施 |
申込受付期間 | 試験前日・正午前まで(クレジットカード、バウチャーの場合) |
受験資格 | なし(誰でも受験可能) |
出題分野・範囲 | ストラテジ系、マネジメント系、テクノロジ系 |
出題数 | 100問 |
試験合格ライン | 総合評価点:600点以上/1,000点 かつ、分野別評価点:300点以上/1,000点 |
試験時間 | 120分 |
出題方式 | CBT方式・四肢択一式 |
試験会場 | 全国の試験会場で開催 |
受験費用 | 7,500円(税込) |
支払い方法 | クレジットカード/コンビニ払い/バウチャー より選択 |
ITパスポート試験は、経済産業省主催の「情報処理技術者試験」の登竜門といえる試験です。
情報処理技術者試験は上記のように13の試験から成っていますが、そのなかでITパスポートは「すべての社会人」を対象に「共通的知識」を問うものとされ、最も難易度の低い試験といえます。
ITパスポート試験の公式ホームページでは、試験の狙いについて「すべての社会人が備えておいてほしい情報技術の基礎知識を受験者に習得していただくこと」と紹介されており、IT初心者でもチャレンジできる内容であることがわかります。
合格率は難易度を直接反映するものではありませんが、毎年どの程度の人が合格しているかを知っておくことで、試験に際しての心構えができます。以下は、ITパスポートの直近の受験者数・合格者数・合格率です。
実施年 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2020 | 131,788人 | 77,512人 | 約59% |
2021 | 211,145人 | 111,241人 | 約53% |
2022 | 231,526人 | 119,495人 | 約52% |
2023 | 265,040人 | 133,292人 | 約50% |
ITパスポート試験の合格率は、例年50〜60%程度と比較的高い水準で、独学でも十分合格を目指すことが可能です。ただし、ここ数年は合格率が少しずつ下がってきているため、しっかりと勉強学習し、油断せず試験に臨みましょう。
ITパスポート試験の合格者数の内訳を見ると、社会人の方が学生よりも合格率が高い傾向があります。以下、合格者数の内訳の表です。
実施年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 |
社会人 | 57.3% | 55.0% | 53.0% |
学生 | 41.2% | 40.0% | 40.2% |
社会人の合格率が高い理由としては、仕事を通してITに関する知識やスキルを身につけている人が多いためと想定されます。
また、試験では一般常識で解ける問題も出題されるため、学生に比べて社会人のほうが有利な可能性も考えられるでしょう。
ITパスポートの合格ラインは、総合評価点が「1000点中600点以上」です。
しかし、出題される3分野それぞれで、300点以上を獲得する必要があります。つまり、総合評価点が600点以上でも、300点未満の分野があれば不合格となります。
そのため、各分野を偏りなく勉強することが必要です。
ITパスポート試験は、ストラテジ系、マネジメント系、テクノロジ系の3分野に分けられ、小問が計100問出題されます。具体的には、ストラテジ系が35問程度、マネジメント系が20問程度、テクノロジ系が45問程度の出題です。
問題数(計100問) | 問題種別 |
ストラテジ系 35問程度 | 企業と法務、経営戦略、システム戦略 |
マネジメント系 20問程度 | 開発技術、プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント |
テクノロジ系 45問程度 | 基礎理論、コンピュータシステム、技術要素 |
問題種別の内容は上の通りですが、ここからは各分野の詳しい内容を見ていきましょう。
ストラテジ系は、経営に関する法律・戦略などの知識が問われる分野です。財務・法務・経営戦略の特徴や基本的な考え方などが出題範囲です。具体的には、企業と法務・経営戦略・システム戦略が問われ、出題範囲は以下の通りとなります。
1 | 企業と法務 | 1 | 企業活動 |
2 | 法務 | ||
2 | 経営戦略 | 3 | 経営戦略マネジメント |
4 | 技術戦略マネジメント | ||
5 | ビジネスインダストリ | ||
3 | システム戦略 | 6 | システム戦略 |
7 | システム企画 |
ストラテジ系では、経営管理、IT利活用、財務諸表、知的財産権、個人情報保護法、ビジネスフレームワーク、技術開発戦略、電子商取引などに関する知識が求められます。
これらの知識は、ビジネスの現場でITを活用する際の戦略立案・法令遵守などで役立ちます。過去問の例は以下の通りです。
【ストラテジ系過去問の例】
著作者の権利である著作権が発生するのはどの時点か。1 .著作物を創作したとき
平成27年度 ITパスポート試験問1
2 .著作物を他人に譲渡したとき
3 .著作物を複製したとき
4 .著作物を文化庁に登録したとき
ストラテジ系ではまず、登場する用語の意味をしっかり勉強することが大切です。マーケティングや法務に関する出題も多いので、関連する用語をよく理解しましょう。
マネジメント系は、情報システムの開発、運用、保守に関わる知識が問われる分野です。 具体的には、開発技術、プロジェクトマネジメント、サービスマネジメントが問われ、出題範囲は以下の通りとなります。
1 | 開発技術 | 1 | システム開発技術 |
2 | ソフトウェア開発管理技術 | ||
2 | プロジェクトマネジメント | 3 | プロジェクトマネジメント |
3 | サービスマネジメント | 4 | サービスマネジメント |
5 | システム監査 |
マネジメント系では、システムの要件定義から開発・保守・運用、アジャイル、プロジェクトマネジメントの意義やプロセス、内部統制、ITガバナンスなどに関する知識が求められます。過去問の例は以下の通りです。
【マネジメント系過去問の例】
システム開発後にプログラムの修正や変更を行うことを何というか。1 .システム化の企画
令和元年度 ITパスポート試験 問題46
2 .システム運用
3 .ソフトウェア保守
4 .要件定義
マネジメント系は、最も出題数が少ないので、確実に回答して高得点を目指せるよう、長文問題でも文章をよく読んで回答することを心がけてください。
テクノロジ系は、ITに関する技術的な知識知識(ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークなど)が問われる分野です。 具体的には、基礎理論・コンピュータシステム・技術要素が問われ、出題範囲は以下の通りとなります。
1 | 基礎理論 | 1 | 基礎理論 |
2 | アルゴリズムとプログラミング | ||
2 | コンピュータシステム | 3 | コンピュータ構成要素 |
4 | システム構成要素 | ||
5 | ソフトウェア | ||
6 | ハードウェア | ||
3 | 技術要素 | 7 | 情報デザイン |
8 | 情報メディア | ||
9 | データベース | ||
10 | ネットワーク | ||
11 | セキュリティ |
テクノロジ系では、二進法・統計・確率などの基礎理論をはじめ、プログラミング言語やアルゴリズム、サーバシステム、仮想化、ファイル管理、IoT、プロトコル、セキュリティマネジメント、Webデザインなどに関する知識が求められます。過去問の例は以下の通りです。
【テクノロジ系過去問の例】
文書作成ソフトがもつ機能である禁則処理が行われた例はどれか。1 .改行後の先頭文字が、指定した文字数分だけ右へ移動した。
令和4年度 ITパスポート試験 問71
2 .行頭に置こうとした句読点や閉じ括弧が、前の行の行末に移動した。
3 .行頭の英字が、小文字から大文字に変換された。
4 .文字列の文字が、指定した幅の中に等間隔に配置された。
テクノロジー系は各分野の中で最多の出題数です。計算が必要な問題・処理の流れを考えなければならない問題なども出題されるため、勉強に際しては図やイラストを活用して、イメージを掴むことも必要となります。
ITパスポート試験の勉強方法は、未経験者と経験者で異なります。
未経験者の場合、勉強時間の目安はおよそ180時間です。基本的なITの知識を身につけるために、時間を確保して勉強することが重要となります。
一方、仕事でIT関連に従事する方・情報系の学生といった経験者の場合、 勉強時間の目安は120時間です。
勉強に際しては、通信制の講座・専門のスクールも利用できますが、独学でも合格レベルに持っていくことも可能です。
テキストや参考書を利用して独学で勉強する場合、まずは全体の流れを把握するために一通り読み進めてインプットします。
またインプットだけでなく、積極的にアウトプットすることもポイントです。具体的にはなるべく早い段階から過去問を解くことで、ご自身の理解度が確認でき、 弱点が把握できるとともに、実際の試験の雰囲気をつかむこともできます。
独学のメリットは、自分のペースで勉強でき、コストが抑えられることです。 一方、デメリットは、不明点を質問できる相手がいないこと、 モチベーションの維持が難しいことなどが挙げられます。
そのため独学は、自己管理能力が高い方・不明点や疑問点を自分で調べて解決できる方・コストを抑えて自分のペースで勉強したい方などに向いています。
通信講座や通学講座の受講では、カリキュラムに沿って勉強を進めることが一般的です。
効率的・体系的な勉強が期待できますが、実績・信頼のある講座を選ぶようにしてください。
通信講座や通学講座のメリットは、専門的な指導・バックアップを受けられること、進捗管理がしやすいことです。 一方デメリットには、費用がかかることや、講座のスケジュールに合わせる必要があることなどが挙げられます。
そのため、通信講座や通学講座の受講は、効率的に勉強したい初学者・ 進捗管理に自信がない方・ 独学に挫折した方などに向いています。
ITパスポートは、ITの基本的な知識の習得を証明する国家試験です。合格率も50〜60%程度と比較的高めで、IT系試験の中では難易度は高くありません。特に、すでに一般的なビジネスの知見を身につけた社会人は、学生と比較して合格率も高いです。
ITパスポートでは 「ストラテジ系、マネジメント系、テクノロジ系」の3分野で一定以上の知識が求められるため、偏りなく勉強してください。
独学でも合格が目指せる試験ですが、必要に応じて通信講座・通学講座の受講も検討すると良いでしょう。