宅建資格が活かせる仕事とは?不動産以外の業界で宅建資格を活かすポイントを紹介
宅建士の資格は不動産業界でしか役立たないというイメージを持たれる方が多いかもしれません。しかし、実際には不動産以外の業界でも、宅建士の資格を…
宅建は人気のある国家資格の一つです。宅建試験の受験を検討するにあたって難易度や合格率が気になるところではないでしょうか。宅建の合格率は高くはなく、「宅建は合格するのが難しい」という声が聞かれることもあります。
今回は宅建の難易度や合格率が低い理由、合格するための勉強方法などについて紹介していきます。
目次
宅建とは、国家資格である宅地建物取引士の略称です。宅地建物取引士資格試験に合格し、各都道府県の登録窓口で登録手続きを行い、宅地建物取扱士証の交付を受けると、宅地建物取引士と名乗ることができます。
宅地建物取引士は、宅地や建物の売買や賃貸の仲介などの不動産取引に関する専門資格です。宅建士にしかできない3つの独占業務があることなどから、有資格者は不動産業界で高い需要があります。宅建士の独占業務は、売買契約や賃貸借契約などの締結前の重要事項説明と、重要事項説明書(35条書面)への記名、契約内容を記載した書面(37条書面)への記名です。
宅建試験は難易度の高い試験と位置付けられています。宅建士の資格を取得すると、不動産業界はもちろんですが、建設業界や金融業界への就職や転職でも有利に働く可能性があります。また、自分自身がアパートを借りたり、マイホームを購入したりする際にも、宅建士の資格取得を通じて得た知識が役立つことがあります。
宅建試験は、毎年約20万人にも及ぶ人が受験する人気の資格試験です。受験申込の受付は7月に行われ、試験日は10月の第3日曜日で、11月下旬に合格発表が行われています。
■宅建試験の概要
宅建試験実施日 | 10月第3日曜日 ※2024年度スケジュール 10月20日(日) |
申込受付期間 | インターネット申込:7月上旬~下旬 郵送申込:7月上旬~7月中旬 ※2024年度スケジュール インターネット申込:7月1日(月)~7月31日(水) 郵送申込:7月1日(月)~7月16日(火) |
受験資格 | なし |
試験科目(出題数) | 権利関係:14問 宅建業法:20問 法令上の制限:8問 税・その他:8問 |
試験合格ライン | 7割以上の正答が目安(合格基準は非公開) |
試験時間 | 2時間(登録講習修了者:1時間50分) |
出題方式 | 50問(登録講習修了者:45問)・四肢択一式 |
試験会場 | 居住する都道府県の試験地 |
受験費用 | 8,200円 |
支払い方法 | インターネット申込:クレジットカード・コンビニエンスストアでの払込・ペイジーのいずれかを選択 郵送申込:コンビニエンスストアでの払込・ペイジー・郵便振替のうち、都道府県の指定した方法 |
資格試験は「合格率=難易度」ではありませんが、毎年どの程度の人数が合格しているか知ることで、ある程度の心づもりができます。
宅建試験の直近5年の合格率をまとめました。
実施年 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2019 | 22万797人 | 3万7,481人 | 17.0% |
2020・10 | 16万8,989人 | 2万9,728人 | 17.6% |
2020・12 | 3万5,261人 | 4,610人 | 13.1% |
2021・10 | 20万9,749人 | 3万7,579人 | 17.9% |
2021・12 | 2万4,965人 | 3,892人 | 15.6% |
2022 | 22万6,048人 | 3万8,525人 | 17.0% |
2023 | 23万3,276人 | 4万25人 | 17.2% |
宅建試験の合格率は直近5年で13%台~17%台です。100人の受験者に対して、合格できるのが13人~17人と考えると、誰でも簡単に受かる試験ではなく、難関資格といえます。
合格ラインは、直近5年では50点中34点~38点となっています。
宅建に関連する資格の合格率と一般的に合格に必要な勉強時間を比較してみます。
資格試験 | 合格率 | 勉強時間 |
宅建 | 17.2% | 400~600時間 |
行政書士 | 14.0% | 800時間 |
司法書士 | 5.2% | 3,000時間 |
FP2級 | 学科試験:59.3% 実技試験:54.9% (日本FP協会) | 150~300時間 |
管理業務主任者 | 21.9% | 300時間 |
賃貸不動産経営管理士 | 28.2% | 100時間 |
不動産鑑定士 | 短答式試験:33.6% 論文式試験:16.5% | 3,000時間 |
マンション管理士 | 10.1% | 500時間 |
合格率と合格に必要な勉強時間に完全な相関関係はありませんが、合格に多くの勉強時間を必要とするほど、合格率が低い傾向があります。たとえば、司法書士と不動産鑑定士はいずれも合格率が5%台で、合格に必要な勉強時間の目安は3,000時間です。一方で、合格に必要とされる勉強時間が100時間の賃貸不動産経営管理士は、合格率が28.2%と高めとなっています。
また、合格には3,000時間の勉強時間が必要とされる司法書士や不動産鑑定士は、社会人が働きながら合格を目指すには、2年~4年程度の期間がかかると想定されます。合格に必要な勉強時間が、800時間とされる行政書士は7ヶ月~10ヶ月程度、500時間とされるマンション管理士は5ヶ月~8ヶ月程度の期間が学習にかかります。管理業務主任者、FP2級といった合格に必要な勉強時間が300時間の資格は、3ヶ月~5ヶ月程度の期間が目安となります。賃貸不動産経営管理士の合格に必要な勉強時間は100時間とされているため、2ヶ月程度期間で対応できることが想定されます。
宅建の合格率は年にもよりますが13%台~17%台と、簡単とはいえません。宅建の合格率が低い理由として、以下の点が挙げられます。
【宅建の合格率が低い理由】
● 問題が難化傾向にあるから
● 出題範囲が広いから
● 受験資格がなく誰でも受験できるから
宅建試験は、民法や宅建業法、都市計画法など出題範囲が広く、専門的な知識が求められるうえに、難化傾向にあることから、合格するには十分な勉強時間を確保する必要があります。また、受験資格が特に設けられておらず、幅広い層が受験をすることも、合格率が低い要因です。
宅建の試験形式は、4肢択一式のマークシート方式で、出題形式は「正しい(または誤っている)選択肢を1つ選ぶ「単純正誤問題」や、正しい(または誤っている)選択肢の個数を答える「個数問題」などがあります。「単純正誤問題」であれば、すべての選択肢の正誤がわからなくても、明らかに正しい(または誤っている)選択肢がわかれば正解することができますが、「個数式」では、すべての選択肢の正誤がわからなければ正解することができません。近年の宅建試験では、この「個数式」の問題が増えており、合格率を下げる要因の一つになっています。
他の不動産関連の資格である管理業務主任者やマンション管理士の資格試験の出題範囲は、マンション管理適正化法などの法令や管理に関する実務、建築や設備など、マンション管理に関する内容が中心です。これに対して、宅建の出題範囲は民法や宅建業法、都市計画法や建築基準法、農地法、不動産に関する税など幅広いことも、難しいといわれる理由です。また、特に民法は法律に触れたことがない人にとっては難解です。
宅建士は不動産の売買や賃貸などの仲介や代理といった様々な取引形態で関わり、対象となる不動産も土地や戸建て、マンション、アパート、ビル、店舗、倉庫、工場など多岐にわたります。宅建士はこうした幅広い不動産取引を円滑に進める役割を担っているため、出題範囲が広範囲に及びます。
宅建試験には特別な受験資格はなく、日本国内に居住している人であれば、年齢や学歴、実務経験などを問わず、誰でも受験することが可能です。宅建試験は誰でも受験できる試験であることから、相応の受験対策の勉強をせずに試験を受けている人がいることも、合格率が低い要因と考えられます。
宅建試験に合格するための勉強方法は、主に以下の3つが挙げられます。
● 独学
● 通信講座
● スクール通学
独学は、自分で宅建試験のテキストや問題集を購入して勉強する方法です。独学はコストを抑えられることや、自分のペースで都合のよいときに勉強を進められることがメリットです。
一方で、独学での勉強では疑問点があったときに、解決するのに時間がかかり、わからないままになってしまう可能性があることが、デメリットに挙げられます。また、教材を選ぶのに手間がかかるほか、試験日までに試験範囲の勉強をすべて終えるように、スケジュール管理を行う難しさもあります。
独学が向いているのは、大学で法律を学んでいて民法を理解している人や不動産業界で働いている人です。他の資格試験で独学で勉強して合格した経験のある人も、勉強の仕方のノウハウがあるため、独学が向いています。
宅建の通信講座は、自宅などでテキストや動画といった教材を利用して学習を進めていきます。通信講座は教材を探す手間がかからず、カリキュラムに沿って受講していけば、試験日までに試験範囲の学習を終えられるため、スケジュール管理がしやすいことがメリットです。また、仕事やプライベートのなどの都合に合わせて好きなときに勉強できます。
ただし、質問対応などのサポート体制は運営会社によって異なりますが、リアルタイムで回答を得られないことがデメリットです。教材が届いても、モチベーションを高く維持できなければ、そのまま放置してしまう可能性もあります。また、スクールよりもコストを抑えられますが、独学よりもコストがかかります。
通信講座は、仕事などが忙しくてスクールに通う時間がとれない人や、コストを抑えて効率よく勉強を進めたい人に向いています。
スクールで宅建講座を受講する方法は、講師による生の講義を聞けるのが特徴です。講義スケジュールに沿って受講するため、学習習慣がつきやすく、疑問点があるときは質問してその場で解決できることがメリットです。他の受講生が勉強している姿を目にするので、モチベーションを維持しやすいという面も期待できます。
一方で講座の時間が決まっている点や通学に時間がかかること、費用が高いことなどがデメリットに挙げられます。ただし、受講できなかった講座を動画で視聴できるスクールもあります。
スクール通学は、手厚いサポートを受けて確実に合格を目指したい人や、時間にゆとりのある人などに向いています。
独学で勉強して宅建試験を受ける際には、申し込みスケジュールや試験日を確認し、申し込み手続きを忘れずに行うことが大切です。試験日を踏まえて、合格に必要な学習時間を確保できるように、計画的に学習を進めていきます。また、最新の法改正への対策も必要です。
宅建の合格に必要な勉強時間は、法律や不動産取引などに関する知識のレベルによって異なります。初学者レベルの人が独学で取り組む場合は600時間程度の勉強時間が必要といわれています。社会人が働きながら1日2時間程度勉強した場合には、7ヶ月弱の期間がかかります。
年に何回も試験が実施される資格試験もありますが、宅建試験は1年に1回です。合格を目指すには、試験日に合わせて必要な勉強時間を確保できるように学習計画を立てて、スケジュール管理を行うことが大切です。
宅建の学習に使用するテキストは一つに絞ることもポイント。書店やネットショップでは多くのテキストが販売されているため、複数のテキストを使って学習したほうが多くの情報を得られるにように感じるかもしれません。しかし、宅建のテキストは通常、試験範囲にもとづいて作成されているので、わかりやすい・わかりにくいという違いはあれど、基本的には同じ内容です。そのため、複数のテキストを参照しながら学習を進めると、時間や費用のムダが生じます。
テキストは自分にとって見やすくわかりやすいものを一つ絞って購入し、効率よく勉強を進めましょう。
宅建試験は、直近の法改正に関わる内容が出題されるのが特徴です。宅建試験はその年の4月1日時点で施行されている法令に従って出題されます。
最新の法改正を確認するとともに、過去問の回答は法改正によって変わる可能性があるという点に注意が必要です。
宅建は司法書士や不動産鑑定士、行政書士ほど、資格取得の難易度が高くはありませんが、合格率は13%台~17%台と難関資格に位置づけられています。宅建試験は出題範囲が広く、難化傾向にあることからも、合格するにはスケジュールを立て、計画的に学習に取り組んでいく必要があります。学習方法には独学や通信講座、スクールへの通学などがあり、それぞれにメリット・デメリットがあるため、自分に合った方法を選択することが大切です。